美容業界の転職で「戻れる会社かどうか」を見極めるチェックポイント

転職の相談を受けていると、給与や休日の話はすぐ出てくるのに、「もし辞めることになったら、また戻れますか」と会社に聞いた人にはほとんど出会いません。
結婚や出産の予定がまだ先でも、美容の仕事を長く続けたい人ほど、ここは入社前に見ておいたほうがいい部分です。

美容業界専門のキャリアアドバイザーをしている三浦佳織です。
エステサロンの店舗で8年、本部の採用・教育担当として6年働きました。
第一子の出産で一度現場を離れ、2年のブランクを経て復職した経験もあります。

この記事では、採用する側と働く側の両方を経験した立場から、「戻れる会社」を入社前に見分けるための確認項目を整理します。
後半では、たかの友梨ビューティクリニックのカムバック採用を例に、公表されている情報をどう読めばいいかも書きました。

美容業界の転職で「戻れるかどうか」を見ておきたい理由

人の出入りが多い業界だから

厚生労働省の令和7年雇用動向調査によると、エステや美容室が含まれる「生活関連サービス業,娯楽業」の2025年の離職率は20.1%でした。
産業全体の13.7%と比べると、6ポイントほど高い数字です。

この区分には旅行業や冠婚葬祭業、娯楽業も入っているので、美容業だけの離職率ではありません。
それでも、人の入れ替わりが多い業種のなかで働いている、という前提は持っておいて損はないと思います。

辞める人が多いということは、裏を返せば、戻ってくる人を受け入れる余地も大きいということです。
採用担当をしていた頃、一から育てる新人と、技術も店のやり方も知っている元スタッフとでは、現場に出るまでの時間がまるで違いました。

辞めた人の約4割は「条件が合えば戻りたい」

リクルートのホットペッパービューティーアカデミーが2026年に実施した美容サロン就業実態調査では、エステティシャンを辞めた人(2,278人)のうち38.3%が「復職したい」または「条件によっては復職したい」と答えています。

では、どんな条件なら戻れるのか。
復職の意向がある元エステティシャン873人が挙げた条件は、次のとおりです(複数回答)。

復職の条件割合
勤務時間を柔軟に選べる(短時間勤務・時短など)60.4%
勤務形態を柔軟に選べる(正社員/パート/業務委託など)50.4%
人間関係が良好で風通しが良い45.5%
給与が安定している43.3%
ブランクを埋める研修や技術サポートがある32.1%
自分と似た状況のスタッフが既に働いている26.6%

上位2つは、どちらも「働き方を選べるか」です。
技術への不安よりも、時間と雇用形態の融通のほうが、戻るかどうかを左右している。

私自身、復職を決めたときに最初に確認したのは、保育園のお迎えに間に合う時間で上がれるかどうかでした。
手が鈍っていないかという心配は、そのあとです。

同じ調査には、エステティシャンを辞めた理由の集計もあります。
多い順に、職場の人間関係(23.2%)、給与への不満(23.0%)、労働時間への不満(20.7%)で、結婚・妊娠・出産は15.8%でした。

ライフイベントだけが理由で辞めているわけではない、ということです。
戻りやすい会社を探すなら、制度とあわせて、いまの職場の雰囲気や勤務時間も見ておく必要があります。

再雇用の制度は、どの会社にもあるわけではない

「辞めても戻れる」を制度として用意している会社は、まだ多数派ではありません。

東京都産業労働局の令和7年度 東京都男女雇用平等参画状況調査によれば、育児や介護で退職した人を優先的に雇用する再雇用制度が「ある」と答えた事業所は31.2%、「ない」は59.7%でした(都内の従業員30人以上の586事業所が回答)。
同じ調査で短時間勤務制度が「ある」事業所は80.0%ですから、差ははっきりしています。

法律上の位置づけも知っておくと役に立ちます。
育児・介護休業法の第27条は、妊娠・出産・育児・介護を理由に退職した人について、募集や採用で特別の配慮をするよう会社に求めています。
ただし、これは「努めなければならない」という努力義務です。

条文を読むと、退職のときに「働けるようになったらまた雇ってほしい」と申し出ていた人が対象になっています。
辞めるときのひと言が、あとで効いてくるわけです。

もうひとつ。
厚生労働省が示している求人時の労働条件の明示項目(業務内容、就業場所、就業時間、賃金など)に、再雇用制度の有無は入っていません。
求人票に書かれていなくても不思議はなく、こちらから聞かなければ分からない情報です。

入社前に確認したいチェックポイント

求人票、採用サイト、面接のそれぞれで確認できることを表にまとめました。

確認することどこで確認するか
再雇用(カムバック採用)が制度として明記されているか求人票の福利厚生欄、採用サイト
対象になる退職理由と、退職後の年数などの条件面接、就業規則
戻るときに選べる雇用形態と勤務時間採用サイト、面接
戻ったときの給与・等級の扱い面接
退職後も会社から情報が届く仕組みがあるか採用サイト、ニュースリリース
実際に戻った人、子育て中の人が働いているか面接、店舗見学

制度が書かれているか、条件はどうか

まず求人票の福利厚生欄を見てください。
「再雇用制度」「カムバック採用」「ジョブリターン」といった言葉があれば、少なくとも会社として受け入れる方針は持っています。

次に条件です。
勤続年数や、退職から何年以内といった期限を設けている会社もあります。

対象が育児や介護による退職に限られるのか、転職で辞めた人も含むのかも会社によって違います。
ここは面接で聞いておくと安心です。

戻るときの働き方と待遇

先ほどの調査のとおり、復職の条件でいちばん多いのは時間の柔軟さでした。
正社員のフルタイムでしか戻れない制度だと、子どもが小さいうちは使いにくいのが実情です。
パートや時間限定の枠があるかどうかを見てください。

育児中の短時間勤務にも注意点があります。
育児・介護休業法は、3歳未満の子どもを育てる人の短時間勤務を会社に義務づけていますが、労使協定があれば、雇用されて1年未満の人を対象から外せることになっています。
再入社してすぐ時短を使いたい場合は、その扱いを事前に確認しておきましょう。

給与や等級は、退職時と同じところから始められるとは限りません。
聞きにくい話ですが、あとで食い違うよりずっといいです。

辞めたあとのつながりと、実際に働いている人

制度があっても、退職したら連絡が途絶える会社では、戻るきっかけをつかみにくくなります。
求人や社内の近況が退職者にも届く仕組みがあるかどうかは、採用サイトやニュースリリースで分かることがあります。

そして、私がいちばん重く見ているのが「実際に戻った人がいるか」です。
店舗見学のときに、子育て中のスタッフや復職したスタッフが何人いるかを聞いてみてください。

面接でそのまま使える聞き方

制度のことを聞くと印象が悪くなるのでは、と心配する方がいます。
採用担当だった私の感覚では、長く働くつもりで聞いていることが伝われば、マイナスにはなりません。

  • 「長く働きたいと考えています。出産や介護で一度離れた方が戻られた例はありますか」
  • 「再雇用制度を利用する場合、退職後の年数などの条件はありますか」
  • 「復職された方は、どのような勤務時間や雇用形態で働かれていますか」
  • 「子育て中のスタッフの方は、この店舗に何名いらっしゃいますか」

事例で見る、たかの友梨のカムバック採用

チェックポイントを実際の会社に当てはめてみます。
題材は、たかの友梨ビューティクリニックを運営する株式会社不二ビューティです。
同社の会社概要によると、創業は1978年、2024年12月現在で70店舗、従業員は721名です。

不二ビューティは、人事システム「タレントパレット」をカムバック採用の基盤として導入しました。
提供元のプラスアルファ・コンサルティングが2025年8月27日に発表し、同年10月3日には不二ビューティの採用サイトにも告知が掲載されています。

告知文によれば、それまでも従業員の紹介によるカムバック採用を年間数名おこなっていたそうです。
そこから一歩進めて、退職者の経歴やスキルを一元管理し、最新の人事制度やニュース、求人を定期的に届ける形にしました。

対象として挙げているのは、結婚・出産・育児・介護などで退職した元社員です。
正社員での復帰が難しい人には、時間限定や期間限定の求人を提案していく考えも示されています。

戻ったあとの働き方に関わる制度も、採用サイトに載っています。
時短勤務は子どもが小学校に入学するまで、残業の免除は小学校を卒業するまで、希望者が利用できるとのことです。
法律が義務づけている時短勤務は3歳未満までなので、それより長く使える設計になっています。

この仕組みを働く側の目線でかみ砕いた記事としては、たかの友梨の元社員が復職しやすくなる仕組みを紹介したページが読みやすいと思います。

先ほどのチェックポイントに照らすと、こうなります。

チェックポイント公表情報から分かること
制度の明記採用サイトの告知でカムバック採用の強化を公表
対象になる退職理由結婚・出産・育児・介護など
戻るときの働き方時間限定・期間限定の求人を提案する方針
退職後のつながり人事制度・ニュース・求人を定期的に発信
退職後の年数などの条件公表情報では確認できず
戻ったときの給与・等級公表情報では確認できず
導入後に戻った人数公表情報では確認できず(導入前は年間数名)

表の上4つは、入社前に外から確認できる情報としてはかなり揃っているほうです。
退職者に情報を届け続ける仕組みまで公表している会社は、私が見てきた範囲では多くありません。

下の3つは、応募するなら面接で聞く項目になります。
これは同社に限らず、どの会社でも同じです。

公表されている部分で方針を確かめ、書かれていない部分は自分で聞く。
この順番で見ていくと、判断がぶれません。

退職するときにやっておきたいこと

「戻れる会社」に入っても、辞め方しだいで戻りやすさは変わります。

  • 退職の面談で「働けるようになったら戻りたい」という希望を、はっきり言葉にして伝える
  • 退職後も連絡がつくメールアドレスを会社に残しておく
  • 退職者向けの登録や案内があれば、その場で手続きしておく
  • 引き継ぎを丁寧に終えて、店舗のスタッフと気持ちよく別れる

1つ目は、育児・介護休業法の第27条が「退職の際に申出をしていた人」を対象にしていることとも重なります。

採用担当の頃、退職時にひと言もらえていた人には、求人が出たときに真っ先に連絡していました。
何も言わずに辞めた人には、こちらから声をかけていいのか迷ってしまうのです。

まとめ

美容の仕事は、身につけた技術が自分に残ります。
だからこそ、一度離れても戻れる場所があるかどうかは、転職先を選ぶときの大事な判断材料になります。

確認の順番は、求人票と採用サイトで制度の有無と方針を見る、面接で条件と待遇を聞く、店舗で実際に働いている人を確かめる、です。
たかの友梨のように、退職者との連絡の仕組みまで公表している会社は、入社前に得られる材料が多いぶん比べやすくなります。

私が復職したとき、背中を押してくれたのは制度の説明書きよりも、「戻ってきた先輩が同じ店にいる」という事実でした。
次の職場を探している方は、面接でひとつだけでも「戻った方はいますか」と聞いてみてください。
その答え方に、会社の姿勢が出ます。

Last Updated on 2026年9月30日 by watado